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入手条件 性格 声優 機体解説 性能プラス補正アビリティ マイナス補正アビリティ ライドレシオMAX時の上昇能力 イベント EXカラー 専用レールアクション用GC装備所持者 入手条件 F3大会優勝後に届く挑戦メール「タケルからの挑戦状」を確認後、ゲームセンターに登場する 「タケル」に勝利するとアルトレーネと共にショップに追加される。試合内容は1on2のハンデ戦。 (上記挑戦者が出現し勝利していない場合はF2大会終了後、ゲームセンターから消える) 勝利していない場合、F2大会に優勝することでもショップに追加される。 性格 やや扱いづらい ボクっ子 自身の性能に自信を持つがゆえに、マスターには何かと不安を見せ色々と指南を繰り広げる 小生意気でちょっと世話焼きな神姫。 声優 水橋かおり 機体解説 名称:戦乙女型MMSアルトアイネス メーカー 素体:Dione Corporation 武装:Arms in Pocket 型番:DI/AIP-001X2 2038年に開催されたコンテスト「ぼくらの神姫」(一般から武装神姫のアイデアを募集、競うもの)受賞作を元に ディオーネコーポレーションとアームズ・イン・ポケット社が共同開発した「アルトレーネ」(DI/AIP-001X1)の姉妹機。 本機はスモールボディならではの敏捷さを利用したバトルスタイルが特徴で立体的な戦術を得意とする。 機体各所に配置された強化クリスタルアーマー内にはそれぞれ小型コンデンサを内蔵。副腕部、脚部などへ独立した パワー供給が可能となり大柄なアーマーにもかかわらず高い機動力を獲得している。また特徴的なスカートアーマーは 展開して格闘用武器、変形して高機動用ウイングへと転用できる多用途なユニットとなっており、優れた攻守のバランスを 実現している。加えて頭部にはアルトレーネとは別タイプのバイザーを装備、脆弱になりがちなフェイス部の防御力を高めている。 性能的には申し分ないが性格の面ではやや扱い難いところもあり、マスターを選ぶ神姫と言えるだろう。 性能 能力値 LP SP ATK DEF DEX SPD BST 適正 S C A B B B B プラス補正アビリティ 攻撃力+1,LP+1 マイナス補正アビリティ SP-1 ライドレシオMAX時の上昇能力 防御力,武器エネルギー回復速度,スピード イベント +ネタバレ 発生条件 イベント名 備考 初勝利後 ニヤニヤしてる? Love4:ゲーセン勝利後 フルオープン Love7:自宅 カノジョいないの? Love10:ゲーセン勝利後 気になるブログ Love11:ゲーセン勝利後 丁寧な返答 Love12:ゲーセン勝利後 初対面 Love15:ゲーセン勝利後 デートに誘え 「バトルに誘う」を選択した場合バトル有(ロッテンマイヤー 小山田愛佳)敗北でも進行するが、勝利すれば称号(禍福の証)入手 『デートに誘え』終了ゲーセン勝利後 ファーストデート Love18:ゲーセン勝利後 セカンドデート Love20:ゲーセン勝利後 最後のデート EXカラー A.蒼髪(デフォルト) +ネタバレ B.金髪 C.紫髪 専用レールアクション用GC装備所持者 植場怜太 陰陽熊
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第三話 「バトルフィールド・砂漠地帯。おーなーノミナサマハ神姫ヲすたんばいシテクダサイ」 ジャッジAIが無機質な声で会場の準備が整ったことを伝える。 神姫同士の戦い、すなわちバトルロンドは大きく分けてバーチャルバトルとリアルバトルの二種類がある。 バーチャルバトルは文字通り「仮想現実空間でのバトル」で、常に最高の状態で戦えるのが特徴だ。 何より神姫が壊れることもない。ただし、バトル中に味わった恐怖をトラウマとしてそのまま引きずることもあるので一概に安全とは言えないが、これの普及も武装神姫がここまで流行った理由の一つである。 逆にリアルバトルではふつうに実弾が飛び交い、神姫も実際に損傷する。 しかし、こっちはこっちでバーチャルにはないスリルが楽しめる。 さらに、バトルの公正さを保つために個々の神姫にはランクというものが与えられている。 これは一定のポイントをためるとランクが上がるというモノで、勝てば成績に応じてポイントが与えられ、負ければその分相手に奪われる。さらに、格上の相手に勝てばたくさんポイントがもらえ、逆に格下に負けてしまった場合、最悪降格もあり得る。早い話が弱肉強食だ。 全部で五段階あり、上からプラチナ>ゴールド>シルバー>カッパー>ブロンズの順に低くなっていき、上に行けば行くほどリアルバトルが数を増してくる。 ちなみに優一のアカツキはシルバーランクの中堅どころをキープしている。 そしてスペックが異常な違法パーツや反則行為は厳しく規制するレギュレーションもそれに一役買っている。 しかし、中にはルールギリギリのヒールファイターもいるものである。 「アカツキ、危なくなったらギブアップもして良いぞ」 「「最後まで諦めるな」って教えたのはマスターでしょう?絶対勝ってきますよ」 「そう来なくっちゃな。それでこそ俺の神姫だ」 クレイドルのハッチが閉じられ、ロードが始まる。その間に優一は可能な限り情報を集めにかかった。 「障害物と呼べるのは岩場とサボテンくらい・・・、サバが地面に刺さっているのはギャグとして受け取っておこう。 とれるレンジは自ずと離れざるを得ないからアカツキにとっては有利だな」 そうこうしているうちに互いの神姫がバーチャル空間に転送されてきた。 アカツキはアーンヴァルのデフォルトである白い翼のようなフライトユニット・リアウィングAAU7を背中に、 左腕にはガードシールド、頭にはヘッドセンサー・アネーロ改を装備している。 これは天使コマンド型・ウェルクストラのデータをフィートバックした最新鋭モデルだ。 いや、アカツキ自身もアーンヴァルの上位機種である「アーンヴァルトランシェ2」と呼ばれるモデルだ。 当然性能も並のアーンヴァルのより少しは上である。 武装は右手に標準的なアサルトライフルを持ち、M4ライトセーバーを両腰のホルスターに収めている。 予備の武装であるLC3レーザーライフルと2種類のカロッテ、蓬莱壱式を改造したロケットランチャーとMVランスは まとめてサイドボードに格納されている。 対するジャンヌは漆黒の鎧に身を包んでいるが、装備している武器は火器ばかりだ。 あれでは完全にサイフォスの特徴を完全に殺してしまっている。 自分ならバランスのとれたヴァッフェバニーのバックパックにランスと二本の剣に加えて補助でサブマシンガンか、ハンドガンを1,2丁持たせる。 「バトルロンド、セットアップ。レディ・・・ゴー!!」 「さあジャンヌ、あの天使型の子を血祭りにあげておやり!!」 「イエス・マスター!」 試合開始のブザーが鳴ったと同時にジャンヌが全身の砲を一斉にぶっ放してきた。 「あの神姫、スポーツマンシップってモノが無いんですか?」 「神姫に罪は無い。それと避けないと木っ端微塵だぞ!」 「わかってますよもう!」 アカツキはアウターバーナーを噴かして急上昇し、辛うじて回避する。こうなると戦術は一つ。 「アカツキ、回避に専念しろ。レーザーライフルを使う」 「いきなりそれですか。」 「相手のウィークポイントに一撃当てたら接近戦だ。とはいえ、相手はサイフォスだから簡単には行かないかな」 「簡単に進むことほどショボイことはありませんて。」 「よく言った!」 優一はサイドボードの武装とメインボードの武装の入れ替えの準備を始めた。アカツキの右手にあったアサルトライフルがポリゴンの塊となって消滅し、代わりにアカツキの身長ほどはあろうかというLC3レーザーライフルが転送された。 「そんなモノ、出してきたところでムダですわ!ジャンヌ!!」 「イエス・マスター!」 ジャンヌは再び全身の火器を撃ってくる。今度は一撃必殺を狙った収束ではなく、けん制目的の拡散発射だ。 しかし、アカツキはこれらを紙一重でかわして行く。 「エネルギー充電完了、システムオールグリーン、ターゲットロックオン!いっけえええぇぇぇぇぇ!!」 腰だめに構えたレーザーライフルの砲口からプラズマ球が発生し、一拍おいて閃光が迸る。 それは真っ直ぐジャンヌへと向かい、彼女の体を包み込んでゆく。 そして照射が終わった頃にはジャンヌがいた場所は巨大なクレーターができあがっていた。 「やった?撃った?勝った?」 「お前はシーザーか。・・・?!いかん!!まだだ!!」 「え・・・きゃあ!!」 勝利を確信しかけたその次の瞬間、グレネードの一撃がリアウィングに着弾し、根元から折れてしまった。 その結果、揚力を失ったアカツキは落下するも、脚部のブースターを使って辛うじて着陸する。 「装備を・・・。マスターから授かった私の装備を・・・、許しませんわ!!」 「ぐふぅ!!」 ジャンヌのボディーブローが脇腹にクリーンヒットし、思わず膝を着くアカツキ。 そこへさらに彼女の顔に蹴りが入り、地面へと倒れ込んでしまう。 「誇り高き鶴畑の神姫たるこの私の装備だけでなく、あまつさえ五体の一つを奪うなど、 身の程知らずも甚だしい!その行為、万死に値しますわ!!」 そう言うとジャンヌはさっきのお返しだと言わんばかりにアカツキを足蹴にし始めた。 火器に誘爆したのか、確かに装甲や火器ははほとんど残っておらず、左前腕が無くなっている。 「そうよジャンヌ、この鶴畑和美に逆らった愚か者はどうなるか、観客に教えて差し上げなさい!」 「イエス・マスター!!」 「うっ、あぐっ、くはぁ!」 和美の指示を受けたジャンヌはアカツキをより一層痛めつける。 しかし、残された力を振り絞ってアカツキはジャンヌの脚をつかんだ。 「まだ抵抗する力が残っていましたの?ジャンヌ、トドメを」 「イエス・マスター!」 「まだ、終わっちゃいない!!」 一本残されたナイフをのど元に突き立てようとしたジャンヌめがけてバイザーに隠されたバルカン砲を放った。 人間で言えば豆鉄砲に当たるので、ダメージには至らないが、怯ませるのには十分だった。 「マスター、今です!MVランスを!!」 「いよっしゃ、受け取れ!!」 アカツキはリアウィングをパージし、転送されてきたMVランスを受け取ると、 少し距離を空けてからジャンヌめがけて突撃した。 「いっけえええええぇぇぇぇ!!」 「悪あがきですわね。ジャンヌ!!」 「イエス・マスター!!!」 ジャンヌも転送されてきたトライデントを手に取ると、アカツキに正面からぶつかっていった。 お互いの位置が入れ替わった。 アカツキは右腕を喪失したが、かわりにジャンヌの胸には深々とMVランスが突き刺さっていた。 「ばとるおーばー。Winner、アカツキ」 「マスター!私、勝ちましたよ!!」 「よくやったなぁアカツキ!!さすがだ!!」 クレイドルから出てきたアカツキは感極まって優一に飛びついた。 ところが、反対側から怒声が聞こえてきた。 「全く!!後一歩だったと言うのに、なんたる失態ですの!!ジャンヌ、それとそこのあなた!!今日の所は許してあげますが、次はこうも行きませんわよ!!!」 そう言うと和美は床を打ち鳴らさんばかりにがに股でその場を後にした。 「何ででしょう、一種の哀れみの感情が・・・」 「まあ、良い薬になっただろう。勝負の世界は勝ち続けるよりもある程度は負けを重ねた方が経験になるからな。それはそうとお疲れさんアカツキ。ちょうど昼時だし、うちに帰って焼きそばでも食うか」 「はい、それじゃあ具は豚コマとニンジンにタマネギ、味付けはソースも良いですけど、偶には酢醤油も悪くないですね」 「酢醤油とは・・・、意外と通だな」 「そんなこと無いですよもう!」 二人の絆は家族とも友人とも、恋人のそれともまた違ったモノがあった。 ~The END~ とっぷに戻る
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第2部 「ミッドナイトブルー」 第11話 「night-11」 2ヵ月後 西暦2041年 7月21日 15:00 『大阪府 大阪市 鶴見緑地センター店』 お昼の3時のチャイムが公園内に響く。 園内の噴水広場の軽食コーナー、そこでは多種多様な神姫とオーナーたちがお菓子を食べて雑談をしていた。 オーナー1「おい、知ってるか?昨日の夕方、出たらしいぜ」 オーナー2「出たって何が?」 天使型「例の都市伝説ですね」 剣士型「超音速の死神か・・・」 悪魔型「ええーーーほ、本当?」 オーナー3「ついにこの神姫センターにも、来たか」 種型「なんでも物凄い数の神姫が撃破されたらしい」 花型「ひゃーーー恐ろしい恐ろしい」 オーナー5「超音速の死神、あれって実在するのか?よくあるゴーストファイターだろ?」 雑談に花を咲かせるオーナーたち。 軽食コーナーの端でパラソルの下で老人と将棋を打っている黒い軍服を着た将校型神姫がぼつりとつぶやく。 ナターリャ「やれやれ、またなんとかの死神か」 アオイ「死神といえば、あいつを思い出しますねーナターリャ将軍」 ナターリャの将棋を観戦するアオイとツクヨミ。 ナターリャ「そいつの話はするな」 ツクヨミ「ちょっとトラウマって奴ですか?」 茶化すツクヨミ。 軽食コーナーの横の桟橋では航空母艦型のツラギが停泊し甲板を開放し中央では武装をはずして水着姿になった神姫たちがホースを掴んでキャッキャと水浴びして遊んでいる。 ツラギ「あーーあーー、最近なんか張り合いのある奴がいなくてつまんないですねーマスター」 でっぷりと太った金川がカメラを片手に水着姿の神姫を写真に収めて満足している。 金川「いやいやーこういう可愛い神姫たちのキャッキャウフフを愛でるのもいいもんだよ」 ツラギ「なにも私の甲板の上でやらなくても・・・」 金川「オマエの上だったらいろいろと遊び道具とかあるし、便利だろ!艦内にはシャワーもあるし!!」 ツラギ「そういうのに、空母型使わないでくださいよー」 パチン ナターリャ「チェックメイト・・・じゃなかった王手!」 ナターリャが将棋を心地よく打つ。 ナターリャ「うむ!将棋も悪くないな!!面白い!」 ナターリャの対戦相手でありオーナーである伊藤は満足そうなナターリャを見て微笑む。 伊藤「それはよかったですね。ナターリャー」 湖に灰色の数十隻の戦艦型神姫が着水する。 野木「やあ、みんなお久しぶり」 ラフな半そでのTシャツを着た野木が軽食コーナーに顔を出す。 金川「おおー野木ちゃんお久しぶりー」 立花「ノギッチ!キター」 衛山「おひさ」 野木「ナターリャ将軍、おひさ」 ナターリャ「うむ」 ナターリャは手をひらひらと振る。 野木「調子はどうだい?」 ナターリャ「まあまあ、かな?最近はとんと暇している」 アオイ「張り合いのある神姫がいないんだとよ」 野木「まあ、SSS級の将軍に合うようないい娘はなかなかそういないからね」 湖に着水した数十体の戦艦型神姫の灰色の巨体がまぶしく光る。 ナターリャ「灰色艦隊は、すべて復活したようだな」 野木「まあな、マキシマがバラバラになっていて完全に治すのに1ヶ月以上かかった」 マキシマがやれやれと肩をすくめる。 マキシマ「今度、やるときは指揮系統をしっかりとしてくれよ」 ナターリャ「今度か・・・」 ナターリャは遠い目をして湖を見る。 ナターリャ「そういえば、夜帝はどうしている?」 野木「夜帝か、あいつは心斎橋の神姫センターでちょくちょく見かけているって話だ」 2ヶ月前に行われた夜帝との激戦はネットにも動画が公開され、多くの話題を呼んだ。 今まで夜帝の存在はあまり公には知られておらず、都市伝説化していたが二日間にわたる連戦で、夜帝がたった1機で戦艦型神姫を9隻、航空母艦型1隻、艦載機10数機という完全武装の2個艦隊を撃滅したことは多くの神姫たちを震撼させた。 夜帝はナターリャの手によって敗れたが、帰ってその名声を轟かせたことになる。 ナターリャ「そうか・・・またあいつとチェスを、いや・・・神姫バトルをやってみたいな」 ナターリャは感慨深くそういうとパチンと将棋を打つ。 アオイ「神姫バトルって将軍は、基本他人のふんどしで戦うだけでしょwwww」 ナターリャ「・・・」 青筋を立ててナターリャはパチンと指を鳴らす。 アオイ「ちょ」 湖に停泊中の灰色艦隊がアオイに向かって砲塔を向ける。 マキシマ「艦砲射撃ッ!!撃ち方ァーー用意!!」 ヴィクトリア「アオイさんはいつも一言余計なんですよ・・・・」 ナターリャ「これが私のバトルスタイルだ。文句があるならいつもで受け付けるが?」 野木「将軍には誰も勝てないな」 ナターリャ「SSS級でも用意したまえ」 サソリ型「あのお・・・・」 おずおずと一体のサソリ型神姫がナターリャに声をかける。 サソリ型「この間から夕方の5時に超音速の死神って二つ名のSSS級ランカー神姫がこの神姫センターに現れて暴れまくっているのです・・・た、助けてください!ナターリャ将軍!」 野木「はあ?超音速の死神ってあの超音速ステルス戦闘機型MMS「クリスティ」のことかい!?」 野木は目を丸くしてサソリ型の声に耳を傾ける。 サソリ型「はあ、なんでも心斎橋の神姫センターにいたらしんですが、夜帝とテリトリーがかぶるからってこっちに流れてきて・・・ううう・・・もうすでに300機くらいの神姫が、仲間がやられているんですよ・・・」 野木はナターリャに声をかける。 野木「将軍!出番だぜ」 アオイ「おいおい、超音速の死神って・・・確か音速を超える超高速戦闘型の化け物じゃねえか!!」 ツクヨミ「うは、また化け物神姫かよ」 ツクヨミとアオイが唸る。 ナターリャ「ほほう、化け物退治というわけか」 ナターリャはすっと立ち上がり桟橋に停泊している航空母艦型MMSのツラギに声をかける。 ナターリャ「ツラギ!張り合いのある奴が出たぞ!仕留めに行くぞ!!今度は超音速の死神だ!!」 ツラギがきょとんとした顔でナターリャの顔を見る。 ツラギ「ちょ、超音速の死神!!?クリスティじゃないですか!!SSS級の化け物ォ!!」 桟橋にいた灰色艦隊の戦艦型神姫もざわめき出す。 ノザッパ「ひえええええええ!!音よりも速いあのスピード狂ですか!?」 マキシマ「へへっへ、上等じゃねえか」 ヴィクトリア「化け物神姫ですね」 そのとき、神姫センターの上空を真っ黒な槍のようなスマートなフォルムの航空神姫が空を切り裂くように飛び去った。 □超音速ステルス戦闘機型MMS 「クリスティ」 SSSクラス 二つ名「超音速の死神」 姿が見えて、数秒後にショックウェーブが軽食コーナーに巻き起こり、日傘のパラソルが衝撃波で吹き飛び、音が後から付いてくる。 ドゴゴオオオーーーン!!! ナターリャはにやりと笑う。となりにいたサソリ型が悲鳴を上げる。 サソリ型「で、出たァ!!!」 ナターリャ「ふん、あれが超音速の死神か、なるほど化け物神姫め」 アオイ「ひええええ!!お、音が後から来たぞ!」 ツラギ「レーダーに反応無し!!ステルス機だ!!」 ノザッパ「は、速い!!」 ナターリャ「ふはっはっはは!!この間のバトルはまだ続いているぞ!!あのランカー神姫は夜帝のシュヴァルに心斎橋神姫センターを追い出されてここに流れ着いたランカーだ!!俺たちが招いた因果だッ!!!!!!盛大に歓迎してやろうではないか!」 ナターリャは右手を超音速の死神に向ける。 ナターリャ「バトルロンドは戦いの旋律 終わらない戦いの旋律 さあ、私たちも旋律を奏でようではないか・・・」 西暦2041年 その世界ではロボットが日常的に存在し、さまざまな場面で活躍していた。 神姫、それは全高15センチほどのフィギュアロボットである。 :心と感情:を持ち、最も人々の近くにいる存在。 その神姫に人々は、思い思いの武器、装甲を装備させて、戦わせた。 名誉のために強さの証明のために・・・・・・・・・ 名も無き数多くの武装神姫たちの戦い 戦って戦い尽くした先には何があるのか バトルロンドは戦いの旋律 終わらない戦いの旋律 戦いの歴史は繰り返す いにしえの戦士のように 鉄と硝煙にまみれた戦場で 伊達衣装に身を包んだ神の姫たちの戦いが始まる。 第2部 「ミッドナイトブルー」 終わり
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前へ 神姫とは。 ある世界においては、全稼働型の美少女アクションフィギュアのことである。 神姫とは。 またある世界においては超高性能AIを搭載した、主人に従う心と感情を持つフィギュアロボットのことである。 神姫とは。 古今東西あらゆる属性を取りそろえ、抜群の容姿と戦闘力を兼ね備える完璧超人(?)である。 神姫とは。 主人の好機に槍となり、なにより生活に潤いを与えてくれる存在である。 そして鷹峰家の神姫とは…… 『ハーヤーテー!!』 別に東京の朝空に響き渡ってはいないが、ハヤテは少女の声を聞き即座に自分のベッドから飛び起きた。 鷹峰ハヤテは十五歳。職業は高校生……予定。 予定というのは、今は中学校卒業後の高校への準備期間であり、まだ高校生ではないからである。 「……どうしたの、ナギ」 眠たげな眼をこすりながら、ナギの声のするほうを向く。 すると小さな二つの液晶画面に向かっていた少女が、不機嫌そうな顔でこっちを向いた。 『バトルハウスで100連勝できない!!』 彼は苦笑いをしながら、あぁ、と思った。 「朝からゲームですか」 『何度やっても60くらいで止まってしまうのだ。 ハヤテ、もうマルチバトルでもいいから助けてくれ』 「……そうだね、面白そう」 彼はそう言いながら部屋の扉に手をかけた。 「じゃあ、着替えて顔を洗ってくるよ。 そしたら僕も入ってあげる」 神姫とはいえ、少女のいる部屋で着替えるのは抵抗があったのである。 『……わかった、早く済ませろよ』 心の中で「はい、お嬢様」と言いつつ、ハヤテは廊下で着替えを済ませ、洗面台で顔を洗った。 「ただいま」 樫の木でできた扉を、極普通に開ける。 『遅い!「ハヤテ」なら全力疾走で来るところだぞ!』 「いや、階段もあるしそれはちょっと」 ハヤテは3DSを起動しながら言う。 「……それで、どんな作戦で行こうか」 『雨パでいいだろう』 「え? 僕晴れパなんだけど……」 『えー? そうなのか? じゃあ私に合わせろよ』 「えぇ? でも…… うーん……」 『あー、もういい、私はこれで行くぞ!』 「え、え? じゃあ僕もこれで……」 バトルの明暗を分ける2人のパーティの相談しないまま受付を済ませる2人。 だがそのパーティの中身は…… 「あれ、ナギ普通のパーティで行くの?」 『そういうお前も普通のじゃないか』 「それは、ナギに合わせようかと……」 『私もお前に…… おっと、始まってしまったな。 む、相手は初戦から強いのを繰り出してきたぞ……』 「大丈夫、たたみがえしがあるよ……ほらっ」 『おおっ!』 彼女を防御技で守って見せると、少女は感心の声を上げた。 彼女こそがハヤテの神姫であるナギ。ハヤテのごとく!のヒロインである三千院ナギをモデルとしたれっきとした武装神姫の一人である。 「主を守るのは、執事の務め、だよね」 『うむ、これで安心して積めたぞ!』 「よし、じゃあ攻撃だ!」 『うむ! ……当たった! 凄い! やったぞハヤテ!』 協力により、見事強力な相手を倒した二人はお互いに賞賛しあった。 『やっぱり、ゲームは二人でやると楽しいな』 「寝起きでマルチバトルするとは思わなかったけどね、ところで」 『ん?』 「このハヤテのごとく!のノベライズ版一巻プロローグ風のオープニングの流れはいつまで続くの?」 『そうだな、そろそろやめるか』 というわけで、普通の流れに戻ります。 第1話 「ナギのごとく!」 本日4月6日。 あれからもう十日が経とうとしていた。 もちろんあれとは、ナギが鷹峰家に来たあの日である。 「……はぁ、もう明日は学校かぁ……」 『学校?』 「言ってなかったっけ。 明日は高校の入学式なんだ。 だから、明日から学校」 『なんだ、お前ニートじゃなかったのか』 「……違うよ。 っていうか、生徒手帳見せたよね?」 休暇中ニートのような生活をしていたのは確かであるが。 ナギが鷹峰家に来たことも相まって、二人でゲーム三昧な毎日を送っていたのである。 「そうだ、ナギは僕が学校行ってる間どうするの? ……ナギも学校来る?」 『誰がそんなもの行くか。 家でゲームでもしているさ』 (そう来ると思ってた) 原作でも不登校気味で一日中家で漫画とゲームをしておりスーパーインドアライフを全力で満喫しているようなヒロインである。 (連れてけなんて言われたらどうしようかと思ってたけど、余計な心配だった) 「じゃあ、ナギは家で待機ね」 『……ハヤテもサボったらどうだ。 ゲームの続きをしようじゃないか』 「僕は初日から学校をサボれるほど、ナギみたいに神経が図太くないからね」 『む!あれは別にサボったわけではない! ただちょっとその……たどり着けなかったと言うか……なんて言うか……』 「でも登校中に海に行こうとしたり勝手にはぐれて時間を潰そうとしたり……」 ※ハヤテのごとく!4巻参照。 アニメではそのシーンは削られてました。 『うるさい!とにかく私は学校には行かんからな! 一人で一人用のゲームでも漁っているから安心して学校に行ってくるがいい!』 「あはは、はいはい。 さて……じゃあ」 時計を見ると、もう11時50分。 あと10分もすれば4月7日。入学式の日だ。 ちなみに学校が始まるのは8時40分である。 (通学の時間とか計算して……7時くらいに起きればいいかな。 やっぱり最低でも7時間は寝たいから、そろそろ…… でも、やっぱり初日から遅刻は嫌だし、もう少し早く?) 『ハヤテ?』 「とりあえず、アラームをセット……」 ハヤテはスマホを操作し、アラーム機能の画面を開く。 時間を6時にセットし、音量を最大に、ちゃんと設定されたのを確認し、携帯を閉じた。 「それと、明日持っていくものは…… 上履きと、筆記用具に、財布に、携帯電話(スマホ)に…… あと、ゲーム機も……」 復唱しながらバッグに詰めてゆく。 (こんなものかな) 確認を終え、ハヤテは歯を磨きに行くために立ち上がる。 「じゃあ、僕は歯を磨いて寝るよ。 ナギもクレイドルに戻ったら?」 『あぁ、そうだな。 ハヤテが寝るんじゃ仕方ない、私も寝るさ。 ……でも、電気を切るのは戻ってきてからだぞ、いいな』 「わかってるよ」 ナギは一人で眠れない、という部分も再現されているようで、 こういった細かい再現もファンであるハヤテとしては嬉しいところである。 「ただいま」 『おお、戻ってきたか』 そう言ってナギはクレイドルに座り込む。 『それじゃあ、もう寝るぞ』 「そうだね、それじゃあおやすみ、ナギ」 『うむ、おやすみ』 ハヤテはナギがスリープ状態になったのを確認し、そのままベッドに転がりこむ。 (学校か…… ……確かに二人で一日中ゲームしてたいって気持ちはナギと同じなんだけどな) ハヤテはそう思いながら、眠りについた。 次へ
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前を見た少女と、煌めく神の姫達(その二) 第四節:真心 楽しかった夕餉も終わり、私達は電車で次の場所へと向かった。そこは、 冬のお台場である。バレンタインには相当早い為か、夜と言ってもさほど カップルの数は多くない。私達の邪魔をされないという意味では、上等! 「とりあえず、観覧車にでも乗るか?街の夜景を見るのも、いいだろう」 「はいっ!あたし達も、こんな所に来るのは初めてですから緊張します」 「……多分それは、マイスターも同じなんだよ?だって頬が、紅いから」 「マイスターも来た事無かったの?大丈夫かしら……でも付いていくわ」 「折角のデートですから、デートコースはマイスターにお任せですの♪」 民放キー局が遠くないこの場所にあるのは、湾岸地区の夜景を楽しむには 最適と、午前中に買い求めた雑誌の記事で書かれていた大観覧車である。 なるほど……目の前にしてみれば、小さな私の躯にはかなり大きい。更に 躯の小さな神姫達ともなれば、天を突く程の巨大な風車なのかもしれん。 「……ふむ、どうだ。これに乗って、今から暫く皆に話をしたいのだが」 「う、うん。良いわよ……アタシには何がどうとか、まだ分からないし」 「きっと東京の夜景が、煌めく無数の宝石みたいに映るはずですの~♪」 「楽しみ、かな。さぁ、マイスター……行こう?邪魔のされない領域に」 「どんな時間が過ごせるのか、楽しみですね……ええと、大人一枚です」 訝しむ受付嬢に“大人一枚”と復唱して、私達はゴンドラへと乗り込む。 デートスポットに一人で来る、こんな外見の私を不審に思うのも当然か。 だが無闇にそれを怒るよりも、今は大切な“妹”達との時間を尊重する! 「ほう……これが、東京の夜景か。どうだ皆、自分達が住まう街の灯は」 「うん、綺麗!凄く綺麗よ……世界がこんなに輝いてるのに、アタシっ」 「それ以上は言いっこ無し。エルナちゃんも、この光景を楽しむんだよ」 「そうですよ。ほらアレ見て下さい!東京タワーですよ、東京タワー!」 「夜空の星はちょっと見辛くても、夜の灯火はまた綺麗ですの~……♪」 その自制が奏功し、皆は輝く夜の街並みに釘付けとなっている。無論私も 東京の美しさを再認識して、荒み気味の“心”が満たされるのを感じる。 陳腐とは思うが、こういう些細な事さえも……今なら大事に思えたのだ。 そして最上部へ差し掛かった辺りで、私は話を切り出してみる事とした。 「……さてと、まずは今日の修理で何をしたか。それを告げねばならん」 「修理、ですか?あたし達は全身のモーターと、電装機器が不調で……」 「とても立ってられなくて、セーフティが起動したんだよ。大丈夫かな」 「有無。それらの交換・修理は無論だが、CSCへの負荷が大きかった」 正直、今告げて良いかは悩んでいた。だが、この後にもっと重大な告白を せねばならん以上は、この程度なら『大事の前の小事』と言えるだろう。 私は、少し不安げに見つめる四人を膝に乗せて“治療”の内容を告げる。 「そこで損耗が軽微な“プロト・クリスタル”の情報を利用したそうだ」 「利用?それって、データの補強に別のCSCを用いたって事ですの?」 「そうだ。現行型CSCの論理ダメージは、そうして修復したらしいぞ」 そして物理的な傷は、Dr.CTaが持つマイクロマシン用の技術で回復した。 その辺をどうやって直したのかは、私には分からぬが……恐らく彼女なら 後顧の憂いがない程度に“傷”を修復してくれた、そう私は信じている。 「そしてエルナ。お前の“CSC”も、同様の方法で修復したと聞いた」 「えッ!?ちょっと、CSCって……アタシにそんなのが入ってたの?」 「有無。当然、現行型CSCではない。もう一つの“プロトタイプ”だ」 「じゃあ……これでエルナちゃんは、正真正銘“神姫”になれたのかな」 「更に言えば、本当の意味であたし達の“妹”にもなりましたね……♪」 それはロッテのCSCが正式に認可される程度に、CSCと酷似した珠。 神姫の試作品が源流ならば、それも必然だったのだろうが……エルナに、 “心”が宿るのを拒む者が居なかったのは、これで確かとなったのだッ! 「やっぱりエルナちゃんは、愛されてましたの。そしてこれからもっ♪」 「う、うん……アタシにも“心”……“真心”が、宿ったのかしら?」 「無論だろう。四人とも、各々の“真心”を得て蘇ったのだ。大丈夫!」 恐らく同じ修理法は何度も使えぬだろう。それだけの“離れ業”なのだ。 だが、Dr.CTaがそうして皆を蘇らせた事は……私達にとって特別な意味を 持つだろう。“魂”が神姫にあるならば、その繋がりがより強固な物へと 進化したという事が、言えるのだからな。私にとっても、誇らしい事だ! 「そっか……じゃあ、アタシもお姉ちゃん達の大切な“妹”になれる?」 「勿論ですの!エルナちゃんは、これからもずっと大切な存在ですの♪」 「ボクらも……アルマお姉ちゃんも、ロッテお姉ちゃんも……なのかな」 「それは、マイスターの“告白”を聞けば分かると思いますよ……うん」 「そうだな。では今こそ、言おうではないか……っと!?ちょっと待て」 そして“様態”の説明が一区切り付いた所で、皆の視線は私へと集まる。 そう、いよいよ告げねばならぬ時が来た……と思ったのだが、見ると外の 風景は、輝く夜景から元居たビルの谷間へと戻ってきていた。そう、今は 観覧車の中……一周してしまえば、降りなければならない。迂闊だった。 「う、うぅむ……時間が来てしまった。場所を変えて、そこで話そうか」 「それがいいですの。ちょっといい雰囲気だったのに、残念ですの……」 「ぅぅ……じゃあ何処に往きますか?あたしは何処でも大丈夫ですけど」 「やっぱり、ロマンチックな場所がいいと思うんだよ。大事な事だから」 「アタシは……胸が熱くなる感じがしてたから、助かるわ。少し怖い位」 ──────私も怖いけど、だけど……とても胸が暖かいよ。 第五節:約束 場所の選定ミスによって、告げるタイミングを逃した私達。だが、ここで 諦めるつもりはない。という訳で、観覧車を後にした私達は海浜公園へと やってきた。潮騒の音が、優しく夜闇を揺らす……そんな静かな場所だ。 だが、どうも仕切直しとなった空気は重苦しい。何から話せばいい……? 「……ところでさ、マイスター。なんでアタシの名は“エルナ”なの?」 「む。いきなりだな、エルナや……そうか、名前の由来が知りたいのか」 「そうみたいなんだよ。ボクは、お店の名前からもらったんだけど……」 「あたしもですね。“ALChemist”から一文字もらってます……あっ!」 そんな雰囲気を撃ち払ったのは、エルナだった。そう、“妹”の名前には しっかりと意味がある。店名から、ドイツ人女性の名を導き出したのだ。 “Alma”と“Lotte”、そして“Clara”に“Erna”。不思議か?だがッ! 「そう。エルナの“r”と“n”は、“m”を分解して捻り出した物だ」 「つまり“錬金術師”の名を冠する大切な神姫、って事になりますの♪」 「アタシも、同じ存在なのね……じゃあ残りの字は、どうするのかしら」 私の考えを聞いて、エルナは嬉しそうに……しかし、少しだけ不安そうに 私を見つめる。彼女の純粋な問いに対する答えは、私の胸にある。それは 少し照れくさい言葉となるが、“告白”の切っ掛けとしては上等だろう。 「まず、“ist”は“Christiane”……クリスティアーネから取った物」 「……なら残りの“h”はどうしますの?それが、気になりますの……」 「そうだな。“Herz”……ドイツ語で、“心”や心臓を意味する単語だ」 『え……?』 そうだ。皆の中心には“心”が……私の“心”がある。今から告げるのは それを確固たる物とする為の、誓いの儀式だ。言葉は、選ばねばならん。 「エルナ。新しく私達の“妹”となる、気高き紫の姫君よ」 「な、何?……マイスター、何でもいいわ。話して……」 「お前を解き放った以上は、終生まで側にいてもらうぞ?」 「これ……首飾り?お姉ちゃん達と、お揃いの……?」 私は、答えを待たずポケットから一つのペンダントを取り出して、彼女に 付けてやった。そう、私の……歩姉さんのペンダントを元に作り上げた、 五人お揃いのペンダント。これがエルナに与える、“約束の翼”である。 何れは此処に神姫バトルの階級章を嵌め込む。そうして完成する逸品だ! 「……クララや、静かなる翠の姫君よ」 「何、かな?マイスター……」 「智恵と、秘められた優しさ。これからも大事にしてほしい」 「……大事に?……それは……」 クララは答えを紡ぎ出そうと俯き何かを思うが、私は更に皆へと告げる。 四人もいるのだ、一々区切るよりは一遍に告げてしまった方が楽だろう? 「アルマよ。陽の如き、明るき紅の姫君」 「は、はいっ!?」 「お前の暖かさと“姉”としての矜持は、皆を支えていくだろうな」 「ぁ……支えるだけじゃ、ダメなんです……その……」 アルマは反論しようとしたが、そこで一端言葉を句切った。そのまま私は 残った一人へと、そして皆へと想いを告げる事とする。血が沸騰しそうな 感覚を堪えて、私は言葉を絞り出す。最早、隠す事は出来ないのだから。 「……そしてロッテ、澄み切った蒼の姫君よ」 「はいですの♪」 「お前は、純粋な“心”で私の……皆の力となった」 「……そう言ってもらえると、光栄ですのっ」 「そして、皆……今だけは、私の『本当の言葉』を伝えたい」 『はい……』 それは、遠い昔に棄ててきた私の“弱さ”。しかし、完全に捨て去る上で 彼女らに、それを伝えないといけなかった……ううん、伝えないとダメ。 私の弱い所も強い所も、全部……何もかも皆に見せないといけないから。 「コホン……皆、とても大切。『好き』とか『愛してる』だけじゃない」 「ま、マイスター……?」 「もっともっと純粋な『大切にしたい』って想いが、私にはあるんだよ」 「……マイスター、その口調……」 「でも、それを一言にしちゃうなら……やっぱりこうなっちゃうかな?」 「ずっと前、お店を立ち上げるより前の……弱かった頃の言葉ですの」 「だから、私は言うよ。アルマ、ロッテ。クララ、エルナ……四人とも」 「う、うん……何?」 そう……これは私が弱さを棄てる前に、歩お姉ちゃんと話していた言葉。 今この時は、この言葉で語りたい……だって、止められない想いだもの。 それはたった一言。陳腐でも、飾らなくてもいい。偽れない大切な言葉。 「“大好き”だよ……皆」 『あ……!?』 その言葉と共に、私は皆の小さな……とても小さな唇と、優しく触れる。 堅い殻の躯だけど、それでも“心”はとても甘く切なくて……暖かいの。 だけど、それを認識したから……私はやっぱり、素直になれないのだな。 「……は、はは。今更生き様は換えられぬが、雰囲気もあるしな?」 「マイスター……」 「だから今だけは、あの言葉で想いを……な、何だクララや?」 そう言い、照れながらも調子を戻した私の掌に乗るのは、クララだった。 彼女は、心なしか潤んだ様に映る“琥珀色の瞳”で、私を見つめている。 「異形を抱えて消えかかったボクを救ってくれたのは、貴女なんだよ」 「……う、うむ。そうだったな」 「その時から、ボクの“心”にはずっと貴女がいたもん」 「クララ……?」 「だから、ボクも言うよ……掛け替えのない大切な人に“大好き”って」 「んむ……ん、ぷは。クララ……むぐぅ!?」 そして私の唇に押しつけ返される、クララの小さな唇。そっと抱きしめる 私の手中で、彼女は身を退き……アルマへと、身を譲った。彼女もまた、 私の唇を奪い……そして、泣きそうな儚い笑顔を浮かべつつ言ったのだ。 「ん、ん……あ、アルマっ?」 「支えるだけじゃダメです。あたしも、皆を愛して……愛されたいから」 「アルマ、お前……」 「だって貴女の“心”が、あたしを暖かくしてくれたから……だから」 「……有り難うな、本当に」 「いいんです、一生お返しするんですから。“大好き”な人に……ね?」 涙が零れる。だが、皆の思いが籠もった“琥珀色の瞳”を見逃すまいと、 私はずっと皆を抱きしめながら、その想いに応えていくのだ。次に、私の 前に現れたのはエルナ。彼女は、頬を真っ赤に染めながら上目で告げた。 「……正直ね?まだ、何もかも信じ切れたわけじゃないの」 「エルナ……それは、そうだろうな」 「だけど、貴女達なら……お姉ちゃん達と貴女なら、信じてみたいわ」 「……そうか」 「“命”と“心”を掛けて救ってくれた皆を、“大好き”って言いたい」 「──────ッ!」 「それが、アタシの“真心”。素直じゃないけど、赦してね?……んっ」 「ん、む……んぅぅ!?」 エルナの告白と共に、私の唇は三度……そして四度塞がれる。最後に私へ “純潔”を捧げたのは……他ならぬロッテだった。彼女は、とても明るく 私に微笑みかけて、そして紅潮する顔をそっと抱きしめてきたのだ……。 「人と神姫では、歩いていける時間が違いますの。永遠は無理です」 「ロ、ッテ……?」 「だけど、全ての時間を“大好き”な人と共に使いたいですの♪」 「あ……ロッテ、皆……ッ!!」 「だって、本当に“大好き”なんですから……貴女の事が」 「……ぐす、みんなぁ……ッ」 「だから万一人間の恋人さんが出来たって、問題ないですの~♪」 「ッ……ばかぁ、っ!」 ロッテの“告白”を受けて、四人が私を見上げる。堪らなく、愛おしい。 私は優しく抱きしめた。小さな殻の躯に詰まっているのは“空”ではなく 純粋で穢れのない“心”。その眩しさで、また私の視界は潤んでしまう。 私は、ずっと……愛しい“妹”達を抱きしめて、歓喜の涙を流していた。 彼女らも、その想いは同じだろう……それがまた嬉しくて、微笑むのだ。 「ぐす……私の“弱さ”を見せたのはお前達だけだ、そして……だなっ」 「今後“弱さ”を見せる事は多分無いだろう……って言いたいのかな?」 「それでも大丈夫ですよ。今の……マイスターの“心”は、皆の中に!」 「ちゃんと刻まれたわ……大丈夫、忘れない。貴女の全てと共に歩むの」 「だから、もう一回だけ。皆で“告白”しますの♪いっせーのーせっ!」 『マイスター……“大好き”ですッ!!!!』 ──────私も、“大好き”だよ……。 ──武装神姫……小さな戦乙女。人と機械の垣根を越えて、そんな君達に 出会えた喜びは、ずっと朽ち果てない宝物だよ……小さな私の“妹”達。 皆で、ずっと一緒に歩んでいこうね。それが、皆の“願い”だから──。 妄想神姫:本編 / Fin. メインメニューへ戻る
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{イリーガル・レプリカ迎撃指令…ルーナ編} ルーナの視点 「それじゃあ全員散開。敵は見つけ次第破壊で頼む。あ、でもちゃんと連絡する事。けっして無茶して闘おうとするんじゃないぞ」 「「「「はい!」」」」 「よし!散開!!」 ダーリンの声と同時にアタシ達、四人の神姫達はアンダーグラウンドの夜に飛び立つ。 満月がとても綺麗ですわ。 たまには一人になるのもいいですわね…あっそうでしたわ、アタシの右手には沙羅曼蛇を持っているから一人じゃないですわね。 一人の時は訓練と調整の毎日でした。 …でもあの時のアタシとは違う。 今のアタシにはダーリンが居てアンジェラスお姉様、クリナーレお姉様、パルカがいるのだから。 だから大丈夫。 気分治しにリアウイングAAU7を使い自由に飛び回る。 アタシが今飛んでる高度は100メートル、とても風が冷たいですわ。 でもこの前よりは寒くありませんわね。 それにすでに召喚した沙羅曼蛇も上機嫌みたいだし、今日は絶好調です。 そんな時。 <………。……> 「え、敵を見つけたって?地上から5メートル、数は二人ですか」 <……?> 「う~ん、ダーリンの話だと連絡しないといけない事になっていますけど…いいです、連絡はしないまま破壊しますわ」 <…?> 「大丈夫ですわ。私と沙羅曼蛇がいるのですもの」 <…!> 「言い答えね。それでは…行きますわよ!」 一気に物凄いスピードで急行下しながら低空飛行しているイリーガル・レプリカの二体を補足する。 型はジルダリアとジュビジーですか。 なら比較的に防御が弱いジルダリアを狙います! 沙羅曼蛇を構えジルダリアに! ズバッ! 「ッ!?!?」 一刀両断ですわ! ジルダリアは頭から身体ごと縦に真っ二つに裂け、断末魔を叫ぶ事も出来ないまま機能停止しました。 少し可哀想と思いますが、これもダーリンの為。 しかたない事です! 「お姉ちゃん!?お前ー!」 ジュビジーは怒り狂いながら私にグリーンカッターで攻撃してきました。 アタシというとソレを冷静に対処しながら、沙羅曼蛇で防ぎ体勢を立て直します。 ぎざぎざの葉を模した回転のこぎりのグリーンカッターが容赦なく沙羅曼蛇を刻む。 でもそれは無駄な事ですわ。 <…笑止> 「え!?グリーンカッターが!?!?」 グリーンカッターは沙羅曼蛇を刻むどころか、ボボボボと燃えていく。 それもそのはずですわ、だって、沙羅曼蛇は火炎灼剣なのですよ。 葉っぱを火に近づけたら燃えるに決まってるじゃないですか。 それにいくら葉を模したといえで、所詮植物系統。 炎に勝てる訳ないですわ。 ジュビジーはグリーンカッターを捨て後退しアタシとの間合いを取る。 まぁー妥当な考えだと思いますわね。 「あのジルダリアは貴女のお姉様だったのかしら?」 「そうよ!何でお姉ちゃんを殺したの!!」 「あら?殺したという表現は違いますわよ。破壊、ですわ」 「はか…い…」 このジュビジー、ちょっとオカシイですわね。 『死』という表現と定義をまるで人間と同じように言う。 「ち、違う!私達は破壊という扱いじゃない!!死ぬという扱いだわ!!!」 「違いますわ。アタシ達は武装神姫。人間の娯楽ために作られた精密機械人形」 「違う!あたしもお姉ちゃんも違うー!!」 リアパーツのキュベレーアフェクションを私に向け、突撃してきた。 キュベレーアフェクションの『収穫の季節』の攻撃をするつもりね。 <…!?主!> 「大丈夫…何もしなくていいの」 「私の必殺技っ!クラエー!!」 <主!> 「………」 ズガシャーーーー!!!! キュベレーアフェクションが一気にアタシを囲み鋭く尖った部分で挟み込む。 普通の神姫なら即穴だらけにされてしまう攻撃ですね。 …でも。 「…そ、そんな……!?」 「気は…済みましたか?」 アタシは健在していますわ。 本来なら例えVIS社製のこの素体のボディーでも重傷免れなかったでしょう…でも残念ながらそう簡単にやられる訳にはいけません。 そして何故穴だらけにならなかったというと、キュベレーアフェクションのニードルシールドがドロドロと溶けていくからです。 「どうして!?何で溶けていくの!?!?」 「それはダーリンが守ってくれたからです」 私は両手を胸元に優しく沿え瞼閉じる。 究極生命態システマイザー。 実はダーリンが私専用に作ってくれたらアーマーなのですわ。 ダーリンが真心を込めてアタシに作ってくれた、この究極生命態システマイザーは目に見えないけど、アタシを守ってくれるもの。 簡潔的に言うとこの究極生命態システマイザーはナノマシンの親戚みたいなものらしく、アタシの保護と回復と補佐をしてくれるシステム。 そのシステムはアタシの身体全体に張り巡らせているのです。 「どうして!?なんで攻撃が効かないの!他の神姫には効いたのに!!」 「今から破壊される貴女が知る必要はありませんわ」 「ヒィッ!?」 沙羅曼蛇を構え一撃で仕留める為に神経を集中させる。 このイリーガル・レプリカのジュビジーには悪いけど、破壊させてもらいます! <蛇眼!> 「ナッ!?動けな――――」 「…さようなら」 シュン! 一瞬にしてジュビジーの後方に居る私。 そして音も無くジュビジーは細切れのバラバラになりながら、暗いアンダーグラウンドの町に落ちっていった。 アタシは沙羅曼蛇を左手で摩りながら一人呟く。 「貴女の気持ち、今のアタシなら分かるわ。だって…昔のアタシは…ただの殺戮兵器でしたもの…」 昔の記憶はあんまり覚えてないけど、あの禍々しくおぞましい記憶は覚えてるわ…。 とても悲しい記憶だけど…。 お姉様…アタシは…。 「あぁー!こんな所に居た!!」 後ろから声がしたので振り返ると、そこに居たのはアンジェラスお姉様だった。 「も~、いったい何処まで探索しに行ってたのよー」 「あら、ここまでですわ♪」 「…そりゃあルーナはここに居るのだからここまでだけど…て、そうじゃなくて!」 「それよりも早くダーリンの所へ戻った方が宜しいじゃなくて?アタシを向かいに来たのはそいう意味も含めてでしょ?」 「アッ!そうだった!!さぁ早くご主人様の所に帰ろう!!!」 アンジェラスお姉様はアタシの左手を掴み引っ張る。 フフッ、アンジェラスお姉様はそそっかしいですね。 そんなにダーリンの所に早く帰りたいんだですか♪ 気持ちは良く分かりますわ。 嫉妬心も出てきちゃいますけど。 …あの頃。 あの頃のアンジェラスお姉様と比べたら…いえ、比べる必要ありませんわ。 アンジェラスお姉様はアンジェラスお姉様ですもの。 いつまでも皆と仲良く生きたいですわ。 そう、いつまでも…。 こうして今日というアタシの日にちは終り告げる。
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「先輩!イルカがこっちを向きましたよ」 「おー、かわいいなぁ。しってたか?イルカは睡眠をとるときに脳を半分ずつ寝かせているんだ」 「そうなんですか?理系としては興味深いですね」 「そのあたりは俺はサッパリだけどな・・・」 「・・・・・あ、次のショーが始まりますよ」 気まずくなって話題をそらす由佳里、その心遣いが優一には痛かった。 電車で小一時間ほどの距離にある水族館、その一角の一番広いスペースを占める大型プールで行われている、イルカのショーを二人は見物していた。 すると突然、イルカの一頭が大ジャンプして着水、大量の水飛沫が二人に降りかかる。 「のわっ!?」 「きゃぁ!!」 「はっちゃー、ビショ濡れだな。大丈夫か?」 「どうにか・・・」 優一は暗い色の服装のためか頭が濡れた以外目立った被害は無いが、由佳里の方は白いブラウス越しに下着が透けてしまっていた。 「・・・・とりあえずこれ、羽織っとくといいよ」 「はい・・・」 そう言って彼は紅くなりながら自分の半袖ジャケットを由佳里に手渡した。 -- 「フンガー!!!」 「お姉様落ち着いてください!」 「駄目だコリャ」 反対側の座席の一角、優一らが座っているちょうど反対側に八雲達がいた。 「だって、今もの凄く良い雰囲気だったでしょう!?」 「だから落ち着いてくださいって!」 怒りやら嫉妬やら負の感情で、アカツキは完全に我を失っていた。 「とにかく、見つかったら面倒だから、二人とも静かにしてくれよ・・・」 「『女の嫉妬は地獄の業火』、って言うでしょ。諦めなさいな」 頭を抱える八雲に追い打ちをかけるミコト。シラヌイは彼の気持ちが何となく判る気がした。 お天道様が南のど真ん中を通過する頃、イルカショーを見終えた二人は外のベンチで休憩を取っていた。 「えっと・・・・・・由佳里、今何時だ?腹減っちまった・・・」 「丁度十二時半ですね。実はお弁当、作って来たんですよ。先輩もどうですか?」 そう言うと由佳里は自分のバッグからゆうに五人分は有りそうな重箱を取り出したが、空腹感が既にピーク(優一の体はトコトン燃費が悪い)に達していた優一からしてみれば好都合だった。 「いよっしゃ。戴くとするかな」 「あhfhrkfじゃいおええかm!!」 「だから!いい加減にしてください!!」 一方、100メートルほど離れた植え込みの影では段々と手に負えなくなってきたアカツキをシラヌイが必死に止めようとしていた。 「手作り弁当とは・・・・やるな・・・・」 「同感」 「まさか、まさかまさかまさか、『君も食べちゃいたいよ』みたいな展開に・・・」 「「なるわけあるか!!」」 二人に気づかれない最大限の音量で突っ込むミコトとシラヌイ。いつもの敬語は何処へやら・・・。 「はふぁー」 ため息をつく八雲、辟易するのも無理は無いだろう。元来彼は他人の行動や言動を疑うことがない。よく言えば正直者、悪く言えば早とちり仕勝ちな人物だからだ。 「兎に角、二人とも後で黒崎に謝っとけよ」 気を取り直して八雲はアカツキとシラヌイに忠告すると、シラヌイは沈黙を持って了解としたが、アカツキから拒否の言葉が飛び出した。 「・・・・・・・・」 「嫌です!」 「へっ?」 「だって、私たちに相談せずに勝手に由佳里さんと出かけちゃったんですよ!後を付けない理由はありません!」 『私があの時シラを切っていればこんな事には・・・!』 内心、「しまった」と思うシラヌイ。自分の所為で優一に怪我をさせてしまったことに。 「兎にも角にも、ランチが済んだら・・・。否!今すぐにでも突撃です!!」 「あ、ちょっと!お姉様!!」 時既に遅し。どこにしまっていたのか、完全武装でアカツキは二人の元へ突貫していた。 「うん?ってえぇえ!?アカツキ!?なんでここに!?」 「マスタァアア!!覚悟ーーーー!!!」 「待て!!話せば判る!!」 「問答無用!!話す必要はありません!!!」 まるで何時ぞやに起きたクーデターを彷彿とさせるやり取りを交わしながら、数分ほど、一人と一体の一方的なドッグファイトが続いた。 ドッグファイトが終わって、悠一は肩で息をしながらアカツキ達に説明していた。 「ぜぇはっ、ぜぇはっ。だから、由佳里に誘われたって、言ってンだろ・・・!」 「だからと言って、隠し事をしていたことには変わらないじゃないですか!」 「あの・・・ごめんなさい、アカツキちゃん。私が、先輩を誘わなければ・・・・」 「そんな!由佳里さんが謝る事じゃ・・・。それに、悪いのはそれに鼻を伸ばして乗っかったマスターの方ですよ」 「だから、黙っていたのは悪かったって言ってるだろうが・・・」 「まあ、その位で良いんじゃないかな?彼にも事情が有ったって事で」 優一は内心「有り難い」と思ってしまった。八雲が間に入らなければ、延々と続いたであろう循環を止めてくれたことに。 「それはともかくとしておいて、久しぶりだな御名上。三年ぶりか?」 「ああ、二日前イギリスからね。本物のタワーブリッジはデカかった・・・」 「ミコトも連れているってことは・・・」 「そう!向こうでも、いや向こうだけでなく世界中で武装神姫は大人気さ!良い修行になったよ。・・・・・ヨーロッパチャンピオンには返り討ちにされたけど・・・」 「あれは別格だろ・・・。ともかく、今度一戦どうだ?留学に出るときは全然だったお前の腕前、どの程度か見たくなった」 「良いねぇ、それ。じゃあ、都合が付いたらすぐにでも連絡するよ」 「あいよ、またな。さてと、俺らも帰るとするかな?」 「マスター、まだ話は終わっていませんよ?」 「そ、そうだったな。はは・・・ははははは」 その後、優一が家路につくのは日も暮れかける時刻だったそうな。 その日の夜、優一達が寝静まった頃合いを見計らって、一つの影がムックリと起き上がると窓を開け、夜空へと飛び立って行った・・・。 第壱拾七話へ続く とっぷに戻る
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「もうっ!いつまで隠れてんのよ!」 アタシの対戦相手のハウリン、たしか凛っていったっけ?正直、あのコには同情する。起動直後でバトル?ありえない。アタシなら絶対イヤ。 そもそもこのバトルの原因の、アイツが絡んでたあの娘。そりゃあ、原因はあっちかもしれないけど、よそ見して歩いてたアイツも悪いんだし。向こうも謝ってるんだからそれでいいのに、なんでまたこんな面倒な事にするのかしら? いっつもそうなのよ、アイツは!態度ばっかりでかくてイヤになっちゃう。 ……いや、悪いトコばっかりってワケでもないのよ?たまにだけど優しいコトもあるし……あ、今は関係ないわよね。 とにかく、そんなワケであのコには同情してるワケ。でも、それはそれ。バトルになった以上は恨みっこなしという事で、さっさと勝たせてもらうつもりだったんだけど。 初心者ってワリにはなかなかやるのよね、あのコ。攻撃はもらっちゃうし、さっきので決めるつもりだったのに逃げられちゃうし。 いい加減探すのにも飽きてきた時、ようやくあのコの姿を見つけた。 巨大な砲身、蓬莱を手に待ち構えていたみたい。まともに撃ったってどうせ当たらないのに、まだ懲りないみたいね。エネルギーを使いきっちゃうけど、次の一撃で、レインディアバスターで止めよ! 「蓬莱ッ!」 相手の砲撃。そんなの何度も当たるモンじゃない。軽く避けて終わり―― 「きゃっ!」 不意に背中に走る衝撃。たいしたことないけど何?撃たれた?今のは…… 「プチマスィーンズ……!やってくれるじゃない」 小型の半自動支援メカ、プチマスィーンズ。銃器を取り付けられた四機のビットが、いつの間にかアタシの周囲を取り囲んでいる。でもこんなの、モノの数じゃないわ!所詮はムダなあがき…… 「わっ!だからムダだって言ってんでしょ……わっ!きゃっ!」 あ~、うっとおしい!ムダだって言ってんのに、しつこく撃ち続けてくる。一発一発はたいしたコトないけど、耐久力に自信がないアタシとしてはこれ以上撃たれるのはかなりマズイ。 回避の為に一度大きく迂回。するとハウリンが背を向けてどこかへ走りだした。また逃げるつもり?冗談じゃないわ、これ以上の面倒はゴメンよ!早く帰って、今日買った服を着たいんだから! ビットの銃撃をくぐり抜けてハウリンを追い掛ける。どうせスピードなら、圧倒的にアタシのが上。逃げたってムダよ! 建物の隙間を縫って走るハウリンを追い掛け、ちょうど四方をビルに囲まれた空間に飛び込んだその時、アタシはハウリンの姿を見失ってしまった。そんなはずない、確かにこっちに逃げて来たし、すぐ近くにいるはずよ。一旦足を止めて周りを見渡す。と、辺りの柱に取り付けられた妙なモノに気が付いた。どこかで見覚えのあるその『何か』。そしてそれが『何か』を察知すると同時に、レインディアを急発進させる。直後に響く爆音と衝撃、ヤバい。 アタシは逃げ場を求めてレインディアを急加速させる。四方を囲まれてる以上、上に逃げるしかない。爆発に巻き込まれるのもマズイけど、このままじゃ生き埋めになっちゃう。 「くぅっ!」 急加速、急旋回、急上昇。さすがにキツイ。体の芯まで響く派手な爆音、もし気付くのが遅かったらと思うとゾっとする。 今のはヤバかった。取り付けられていた『何か』、蓬莱のマガジンだ。炸裂弾が満載のマガジンを爆弾の代わりにするなんて、こすっからい手使ってくれるわね。初心者でここまでやれたのはたいしたモノだけど、もう頭にきた。ここを脱出したら、すぐに終わりにしてあげる。 崩れていくビルの合間を抜け出ると、目の前には空が広がっていて。バーチャル空間ではあるけど、雲一つない青空が広がっていて。だけどその直後に、アタシの視界は塞がれた。雲一つない空に現れた影。 「はあああああああっ!!」 体に走る衝撃と、砕け散る機体。翼を失ったアタシは、真っ逆さまに落ちていくしかなかった。 目の前にあるのは、雲一つない空、そしてあのハウリン、凛だった。 「ふぅ、これで全部セットしました」 『よし。もう少し経ったら姿を見せるぞ』 「ほ、本当に誘いに乗ってくれますかね?罠だと気付かれたら、打つ手がありませんよ?」 隼人の言う通りの場所に蓬莱の残弾、即席の爆弾を仕掛け終えた私は、何度目かの同じ質問をしていました。だってなんというか、あまりにもこの作戦は…… 『単純でいいんだよ。あのツガル、あんまり気の長いヤツじゃないみたいだからな。あの性格じゃあ、もうこの戦いにも飽きてる頃だ。格下相手だし、多少無理をしてでも決着をつけにくるハズだよ』 「ハズ……?」 『はず』 隼人の作戦はこうです。まず、いくつかの建物に爆弾を仕掛けておく。そして相手の前に姿を見せ、指定の場所まで誘導。タイミングを見計らってそれを起爆。四方で同時に爆発が起これば、必然的に退路は上に限られる。それを私が迎撃。相手がどんなに素早くとも、どこに来るのかわかっていれば命中させられる、という事です。 しかし、この作戦は全て予測に基づいたものに過ぎません。全て仮定で語られている以上、決して成功率の高い作戦ではありません。ですが―― 『俺はお前を、俺の相棒を信じる。だからお前も、俺を信じろ。お前の相棒を。な?』 「隼人……はい、わかりました!」 私は信じました。隼人の作戦を、隼人の言葉を。だってそう、私達はパートナー、相棒なんですから。 そして彼女は、アルさんは見事にこちらの思惑に乗ってくれました。そうなればあとは私の役目。放ったのは『獣牙爆熱拳』。捉えたのは私の持つ、最強の必殺技。その一撃は彼女を機体もろともに打ち砕き、強烈に地表へと叩き付けました。 「がはっ……」 彼女の体は固いアスファルトに放射状の亀裂を刻み付けると、そのまま力を失い横たわりました。もとより機動性重視で、防御や耐久力は低いツガルタイプ。もう立ち上がることは出来ないようです。そして―― 『K.O!Winner,Howling,RIN!』 コンピュータが試合終了のコールを鳴らします。そしてそのコールは同時に、私達、私と隼人の初勝利を告げるものでもありました。 「勝っ……た?私が……?本当に……」 『ぃぃぃいよっしゃあああああああ!!勝ったーーーーーーー!!!』 聴覚センサーが割れる程の歓声をあげる隼人。びっくりしました。ただでさえ信じられないことで驚いているのに、お陰で喜ぶタイミングを失ってしまったじゃないですか。 「わ、わーい」 一応喜びを表現しようとしてみたのですが。なんかもうダメっぽいですね。 『なーんだよ凛!もっと全身で喜びを表現しろって!ほーら、バンザー……おふぁ!?』 「!?」 な、なんですか、今の奇声は? 『うるさい!騒ぎすぎ!凛ちゃんがびっくりしてるでしょー!?』 えーと、この声はたしか、舞、さん?こちらからでは姿が見えないので、あまり外で盛り上がってもらっても困るんですが。 『だからって殴るこたぁねーだろ!?』 『うるさい!うるさいからうるさいって言ったの!』 『なんだと!?お前のがよっぽどうるせぇよ!!』 ああ、なんだか子供みたいなケンカが始まってしまいました。こんな時私はどうしたらいいんでしょう。戦闘中は夢中だったので特に気にしませんでしたが、素の応対にはまだ戸惑いがあるんですから。 「あ、あの、お二人共とにかく落ち着いて……」 『うるさいって言った方がうるさいんだよ!』 『なによそれ!バカなんじゃないの!?』 『バカ!?バカって言ったか、このバカは!?』 『誰がバカよ!?』 ああ、ダメそうです。聞いてません。完全無視です。もう、泣いてもいいですか?私。 「……信じらんない」 喧騒の中、天を仰いでいた彼女が、アルさんが小さく呟きました。 「このアタシが……負けた?アンタみたいな初心者に?」 「……」 信じられない、のは私も同様です。勝利の実感等、未だに沸いて来ないのですから。 「おかしいでしょ?せいぜい笑えばいいわよ」 「いえ、そんな事ありません。私なんかが勝てたのは隼人の、マスターのお陰なんですから」 「あんたのマスター?ソイツだって初バトルだったんでしょ?それとも、それだけアタシが情けないって言いたいワケ?」 「違います!ただ私は……隼人を信じる事が出来たから。隼人が、信じてくれたから」 「……?」 私自身、事態を受け入れきることは出来ていません。ですが、私なりに精一杯、彼女に応えなければなりません。私とのバトルに、全力で挑んでくれた彼女に。 「隼人が言ってくれたんです。俺も信じる、だからお前も信じろって。私は、それに応えたかったんです」 「……ハッ、なによそれ?信じるだの信じろだの……マスターとの信頼ってワケ?会ったばっかのマスターがそんなに好きなワケ?」 自然と顔が綻ぶのが自分でもわかりました。その質問だけは迷わずに、そして心から答える事が出来ます。 「はい!大好きですよ。だから私はがんばれたんです」 「……………よく恥ずかし気もなくそんなコト言えるわね。はぁ、なんかもう、どーでもいいわ」 あれ?もしかして呆れられてますか?彼女、アルさんは溜め息まじりに起き上がると、背中を向けたまま言葉を続けました。 「アンタ、バトルは続けるんでしょーね?」 「もちろんです!もっと強くなって、いろんな方と戦ってみたいんです!」 「……ふん、せいぜいがんばりなさいよ。…………また、ね」 それだけ言い残すと、彼女はさっさとフィールドから離脱してしまいました。『また』、一人の神姫として、そしていずれ戦う相手として、認めてもらえたという事でしょうか。 「はい。ありがとう、ございました!」 私は見えなくなった彼女の背中に一礼。心からの感謝を贈りました。 さて、神姫での決着は着いた。これで解決すべき問題は、あと一つ。 「おい、なんか言う事は?」 俺は半ば放心状態の残った『問題』に声を掛けた。このバトルに至ったそもそもの原因、彼にもそろそろご退場願おう。 「な、なんだよ!どうせこんなのマグレだ!」 「昔の人は言いました。『勝てば官軍』。さ~あ、なんか言うことは?」 「お……覚えてろよ!そのうち絶対リベンジしてやるからな!」 散々使い古された捨て台詞を残すと、騒ぎの元凶は慌てて走り去って行った。結局最後までオヤクソクを大事にするヤツだったな。名前すらわからないままだったのは気の毒だが。 「隼人。そ、その……ありが――」 「ったく、いつまでたっても手間がかかるヤツだな、お前は」 「な、なによ!人がせっかくお礼言ってんのに!」 わざわざ礼を言う必要なんてないのに、そんな改まった態度をとられると調子が狂ってしまう。だから俺はあくまでいつも通りに対応した。舞もいつも通りの憎まれ口を叩けるように。 「あの……」 「へーんだ、お前なんかに感謝されなくたっていいよー」 「なっ、調子にのるな!このバカ隼人!」 「んだと!?この泣き虫舞!」 「……あのー」 「誰が泣き虫よ!?私は泣いてなんかないわよ!」 「ウソつけ。さっきだってめそめそ泣いてたクセに」 「…………くすん」 「「あ」」 不意に聞こえた声に、俺達はようやく我に返る。はぐらかすだけのつもりが、つい白熱し過ぎてしまったようだ。舞と同時に視線を落とすと、そこにはいつの間にか凛が立ち尽くしていた。なかなか気付いてやらなかったせいか、凛は目尻に涙を溜めてすねているようだった。 「よ、よお、凛。お疲れ」 「えと、お、おかえり、凛ちゃん」 慌てて取り繕うが、どうしようもない程白々しい。凛はうるんだままの目で俺達を見上げると、哀しそうに抗議の声をあげる。 「二人とも、今私のこと忘れてませんでしたか?」 「「ま、まさか!」」 「…………ぐすっ」 「じょ、冗談だよ冗談!凛。よくやったな」 今にも泣き出しそうな凛。あやすようにその頭を指先で撫でてやると、恥ずかしいのか少し頬を赤らめながら目を細めた。 「ごめんね、私のせいで無茶させちゃって。ありがとう、凛ちゃん」 「いえ、そんなこ――」 「り、ん、ちゃーーーん!!」 「うわぁ!?」 舞の謝罪に応えようと口を開いた凛に、突然情熱的なタックルが浴びせられた。勢い余ってそのまま数回転した凛は、ようやく自分に抱きついたままの彼女に気が付く。 「あ、あなたは?」 「あたしヒカリ!舞の神姫だよ。それより凛ちゃん強いね!かっこよかったよー!」 「あ、ありがとうございます」 「ね、友達になろ!一緒に遊ぼーよ!あ!あたしともバトルしよ!」 凛のバトルを見て興奮しているのか、ヒカリは凛の肩を揺すりながら一方的に喋り続けている。勢いに呑まれた凛はしどろもどろに言葉を発しているが、完全にされるがままだった。 「こーら、ヒカリ。ちょっと落ち着きなさい」 「よかったな凛。早速友達出来て」 「はい!……あの、ヒカリ、さん?とりあえず離してくれませんか?」 「ヒカリさんじゃないの!ヒカリ!友達なんだからヒカリでいいのー!」 「だ、だからヒカリ!はーなーしーてー!」 すっかり気に入られたらしい。凛もまんざらでもないようで、これならお互いいい友達になれそうだ。二人を見つめていた舞も、俺の顔を覗きこむと嬉しそうに微笑んだ。 「よっぽど嬉しいのね。隼人が神姫買うって言ってから、ずーっと楽しみにしてたもん。近くに持ってる人もいなかったしね」 「ま、凛もなんだかんだで嬉しそうだし、よかったよかった」 「はーやーとー!助けてくださーい!」 「あはは、こんやはかえさないよー!」 やれやれ、なんだか賑やかになったものだ。こんな調子じゃあ、明日からも大変そうだ。 これからどんなオーナーと出会い、どんな神姫と戦うのか。きっと色んなヤツがいるのだろう。その全てが、俺は楽しみで仕方なかった。まだ目指す場所もわからないが、これから起こる全てを乗り越えて行こう。小さな相棒、武装神姫と。 「凛!これからよろしくな!」 「はい、隼人!こちらこそ!」 『武装神姫-PRINCESS BRAVE-』
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第五話 「ふぅ、どうにか侵入成功っと」 電脳空間の通路の一つにアカツキはレーザートーチで穴を空けるとそこから侵入した。 彼女の侵入した第一サーバーの保安隊は現在大量発生したワームプログラム-実は優一が陽動のために仕掛けた物だった-に対応すべく、最低限の戦力を残してほぼ全てが他のサーバーの応援に出向いていた。 「マスターの陽動も限界が有るから早いこと済ませないと」 今回、アカツキはフル装備状態で出撃していた。推進器系とライトセーバーはいつも通りだが、両手にはビームライフルを持ち、腰部後方にはサブマシンガンとハンドグレネードを装備している。シールドも念には念をと言うことで伸縮式を持ってきた。 通路の突き当たりに一体のアイゼン・ケンプがいる。どうやらそこにデータバンクがあるようだ。アカツキはビームライフルにサイレンサーを取り付けると狙いを定め、引き金を引いた。 パシュン。 周囲に聞こえるか否かの銃声が通路に響き渡る。粒子ビームはコアユニットを正確に貫き、アイゼン・ケンプは沈黙した。 その直後、優一から通信が入る 《もしもしアカツキ、俺だ。その扉は暗証番号を入れるタイプだな》 「開けるのにどれぐらいかかりますか?」 《3桁数字が十種類だから総当たりで一千通りで・・・、早くて45秒だな》 「最短でそれって、もっと掛かるかもしれないってことですか?」 《できる限り急ぐ。それまで持ちこたえてくれ》 「いたぞ、侵入者だ!!」 ワームの撃退を大体終わらせたらしく、戻ってきたアイゼン・ケンプの集団がアカツキに発砲してきた。彼女は寸前で身を翻して物陰に隠れるとその横を銃弾が通過し、扉に着弾した。 《しめたぞアカツキ、この方法なら10秒で開く。やり方は・・・ゴニョゴニョ・・・》 「危険すぎる気も・・・。わかりました」 そう言いながら左手のビームライフルでアカツキは反撃する。 ヘリオンも負けじとSTR-6ミニガンやリニアライフルを撃ち返してくる。 《アカツキ今だ!!》 「了解です!!」 ハンドグレネードだけでなく、プロペラントを扉の前に置き、相手の発砲に合わせてアカツキもビームライフルを撃つ。 するとグレネードによってプロペラントが誘爆し、通路に爆風が広がる。 それによってヘリオン隊は消滅し、扉も破壊される。 《成功だ、この騒ぎを聞きつけて他の連中もこっちに殺到すると思うから早くデータをこっちに》 「わかりました、すぐに作業に入ります」 アカツキはデータの転送作業に入り、その間に優一は広範囲での索敵に取り掛かる。 「マスター、作業を始めた時から気になっていましたが、何も来ませんね」 《確かに妙だな。防衛プログラムの一体や二体、来てもおかしくは無いんだが・・・、まあいいや。アカツキ、こっちの外付けハードに詰めるだけ詰め込んでくれ。うん?アカツキ、後ろだ!!》 「え?きゃあぁ!!」 不意に足下で爆発が起こる。何者かからの攻撃と悟ったアカツキは入り口の方に目をやるとそこに、一体の神姫が立っていた。 素体はツガルの物を使っているが、付けている武装は違った。 脚はツガルのデフォルト装備とは違い、ほっそりとしたシルエットを描いている。背中の2枚の翼はおそらくはフライトユニットだろうか、右手には銃身が流線型のライフルが握られている。 目はどことなく虚ろで口元には薄笑いが浮かんでいるようにアカツキの目には見えた。 《どうして、最新鋭のシュベールトタイプをカタロンが・・・?気を抜くなよアカツキ》 「了解です、マスターはバックアップを」 《神姫は良くてもマスターはダメダメみたいだなぁ、ソフィア後は適当にやっとけ》 「わかったよ、ご主人様」 ソフィアと呼ばれたその神姫はライフルの先から銃剣を繰り出すと、腕に対して垂直に持ち替えて突進してきた。 アカツキもライトセーバーを抜刀すると真正面から受け止め、鍔迫り合いとなる。 その状態でソフィアがアカツキに話しかけてきた。 「ハァイ、貴女が今回の獲物ね?しかもCSCなんてオモチャを載っけてるお嬢ちゃんなんて、無謀極まりないわね。CACを使っている私とどっちが強いかしら?」 「「ハードの強さが全てじゃない、戦術やコンディションで結果はいかようにもなる」ってマスターは言ってました!!」 「そんなの、勝てないヤツの言い訳にすぎないわよ。前置きはさておき、貴女もバラバラにしてあげるわ!!」 「くっ、なめるなぁ!!」 アカツキはライトセーバーで押し返すとソフィア目がけてビームライフルを撃つ。 しかし見切られていたらしく、身をひねってかわされ、逆にライフルで反撃される。磁力で加速した弾丸がシールドに着弾し、表面で爆発する。 「こいつめぇ!!」 今度は左手にサブマシンガンを持ち、ほんの僅かだけ時間差を開けて発砲する。 だが、これも左腕のディフェンスロッドでガードされる。 「どれくらいの腕か試させてもらったけど、興ざめね。壊れなさい」 ソフィアがいきなり急上昇すると、上空で回転して自らの全体重を銃剣に乗せてアカツキ目がけて急降下した。 アカツキは咄嗟にシールドを掲げて防ごうとするも、その勢いは止めきれなかった。 まずシールドの表面に亀裂が走ったと思うとメキメキと音を立てて割れ始め、それを貫いて銃剣の刃が左腕に到達し、さらに切っ先が胸部に大きな傷を付けていく。 「うぐあぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「あ~ゾクゾクするぅ、この瞬間が一ッ番カ・イ・カ・ンなのよねぇ。さぁ、もっともっと私に声を聞かせてちょうだい」 倒れたアカツキにソフィアは容赦なくライフルを撃ってくる。 肩に、脇腹に、脚に、銃弾は全て命中しているが、どれも致命傷を避けられている。まるで昆虫の体のパーツを一つずつ胴から引きちぎって殺していくかの様に。 「ぐぅう、ぎゃぁぁぁ!!」 「はっはっはっはっは、何がMMSだ、何が武装神姫だ。所詮は人形じゃないか。欲望の受け皿になって、オーナーの都合ですぐに捨てられる、愛玩動物の方がよっぽど幸せだよ!!」 《こいつ、腐ってやがる・・・。離脱しろアカツキ、スモークを焚いてその隙に俺が空間に穴を開けるからそこから脱出するんだ!!》 「わかりました!」 そう言ってアカツキはバイザーの横に付けたスモークディスチャージャ ーから煙幕弾を発射する。 部屋全体に白い煙が広がり、それが晴れるころにはアカツキの姿は無かった。 《逃がしてしまうとは、使えない奴め。帰ったらお仕置きだ》 「ごめんねご主人様、役立たずで」 「大丈夫か!?しっかりしろアカツキ!!」 アカツキの回収を確認すると優一はすぐさま彼女をメンテナンス用のクレードルに移す。 「あ・・・、マスター・・・私・・・」 多少なりとも回復したのか、アカツキは目を開けた。かなり憔悴しているらしく、その目には陰りがあった。 「安心しろ、任務は成功だ。それとアネゴにはしばらく依頼を持ってこないよう言っておく。リベンジをしたい気持ちもわかるが、相手は軍用神姫だ。今はゆっくり休め」 「はい、ありがとうございます」 その日の夜中、クレードルの上でアカツキは静かに泣いていた。 「うぅ、勝てなかった・・・。マスターの・・・力になれ・・・なかった」 シュベールトの装備を身に纏ったツガルタイプの神姫・ソフィア、CACを搭載していたとは言え、ツガルそのものは比較的古いタイプだ。それなのに最新鋭のアーンヴァル・トランシェ2の自分が負けた、それが悔しかったのだ。 アカツキの目に再び涙が溢れてくる。彼女が泣き疲れて眠りに就いた時には丑三つ時をすでにまわっていた。 第六話へ とっぷへ
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第5話「白子とご主人様の戦闘準備」 「ご主人様にお願いがあります」 三人でのんびりくつろいでいたとき、白子が妙にかしこまって俺に声をかけた 「ん? なんだ? 改まって」 「実は私…。バトルに、参加してみたいんです!」 「ぎゃにぃい!?」 「し、白ちゃん!?」 まさか、こんな事を言うとは… 「黒ちゃんが毎日うなされてて、私たちにはどうすればいいのか分からない…」 「それは俺だって考えている。でも…」 「そんな、だって…。白ちゃんまで怖い目にあうこと無い!」 あわてて止めようとする俺達二人を白子はかぶりを振って静止する 「一杯、考えたんです。…私も、一度戦場に行ってみたら…何か分かるかも…」 白子が一瞬うつむくが、すぐに凛と顔を上げ 「もう、決めたんです」 その表情を見て、俺も黒子も、白子の説得は不可能だと察した しばし沈黙が流れ、やがて意を決したように 「ボクも、出る!」 「黒ちゃん!?」 「ボクが原因なのに、白ちゃんばっかりにやらせることなんてできない!」 俺は頭痛を感じたが、戦場の恐ろしさに立ち向かうことで黒子のトラウマも軽減されるかもしれない そう思えば、俺に出来ることはたくさんある 「タッグマッチの部門もある。二人ペアで参加するのがいいだろう」 「ご主人様…!」 白子がとがめるような声を出す。過保護な部分がある彼女は黒子を止めるべきだと考えているんだろう しかし、俺はそれを黙殺し、 「それと、二人に、新しい名前をつけてあげよう」 「ご主人様?」 「え? なんで?」 「せっかく試合に出ると決めたんだ。それなのに白子黒子じゃあまりにおざなりだろ?」 「あ、やっぱり自覚あったんですね…」 「じゃあ、ご主人様はボクが試合に出るのに賛成してくれるんだ!」 「ああ、いずれこういう日がくるかもと思って考えていた名前があるんだが、…マリンとアニタってのでどうだ? 白子がマリンで、黒子がアニタだ」 「マリンと、アニタ…ですか」 「いい名前です! 気に入りました!」 「そうか、気に入ってくれたか…。なら、お前達が史上最強の神姫として君臨できるような武装も用意せねばならんな…」 「は?」 「えっと?」 「クククク、待っていろ二人とも、俺が持つすべての技術を結集して究極の装備を開発して見せるぞ! フフフフフ、ハァーッハッハッハッハッ!」 「ご主人様!?」 「き、気を確かにしてください!」 なんか二人が心配していたが、俺は体中にやる気とアイデアが満ち溢れるのを感じていた ―――次の日の夜 「う~、ご主人様遅い…」 いつに無く落ち着きが無い白ちゃん…じゃなかったマリンちゃん 確かにちょっと遅いけど、まだ電車一つ分くらいしか遅れてない 「マリンちゃん…探しにいっちゃだめだよ」 ボクは面白くなって、ちょっと意地悪な声を出しちゃう それにマリンちゃんがぷぅ、と頬を膨らましてちょっと怒ったような声を出そうとした瞬間 バターーン! という、玄関を蹴り開けるような音が響き、 「ただいまぁ!!」 いつもと比べて異様にパワフルなご主人様の声が響く 昨日はひたすら紙にボクたち用武装ユニットの設計図を書きなぐって一晩明かし、 始発が動き始める時間には「早速上司を説得だ!」とか叫んで家を飛び出していったので非常に不安だったけど、一日中ハイテンションは続いたようだ 「マリン! アニタ! 所長を説得して、スポンサー契約を取り付けたぞ! これでうちの研究所が総力を上げてお前たちのバックアップを行う体制になった!」 急な展開に思わず呆れるボク。マリンちゃんは一瞬ふらついたが、すぐに気を取り直してご主人様に噛み付く 「何でいきなりそこまで話が大きくなってるんですか!?」 そんな言葉をご主人様は全く無視してまくし立てる 「二人のための武装も、マリンのは4日後、アニタのも8日でロールアウト予定だ」 完全新規設計の武装ユニットをたった4日で…。でも 「ボクのは後なの?」 「ああ、それだけでなく、マリンのはサード基準、アニタのはセカンド基準の出力になっているから、セカンド昇格まではマリン一人で戦ってもらう」 「ど、どうしてですか?」 「マリンちゃんだけ戦わせるなんて…!?」 「厳しいことだが、これはスポンサー契約の条件の一つだからどうにもならんことだ。ついでに3ヶ月以内にセカンドに昇格できなければスポンサー契約は打ち切られる」 「たったの?」 「一人でやるのに、それは短いよ!」 あまりに無茶な条件にボクは大声を出してしまう 「大丈夫、サードからセカンドに上がった最短レコードは1週間だ。まあ、シングルで、八百長試合の噂が耐えない奴だったが…。それに比べれば競技人口の少ないタッグなら3ヶ月くらいでいける、かもしれない」 「でも一人でなんて!」 「まって、アニタちゃん…。いいの、私やる。ご主人様が出来るって言ってるんだから、それを信じる」 「マリンちゃん…? だって戦うのって危ないんだよ! 怖いんだよ!」 「わかってる。でも、怖いものから逃げちゃ駄目なの。アニタちゃんもそれに立ち向かうって決めたんでしょ?」 「マリンちゃん…」 「大丈夫、サードはヴァーチャルが基本だから、危険は無い、はず」 無責任な事を言うご主人様 「ご主人様…!」 ボクは思わず咎めるような声を出してしまう。でもマリンちゃんはそれを制して 「アニタちゃん、ご主人様を信じられないの?」 「そうじゃないけど…!」 「そうだ、俺を信じろ。俺の何よりも誇れることは、技術力だ。この世の何よりもな」 そう力強く宣言するご主人様。ボクは長らく黙っていたけど 「…はい」 と頷くしかできなかった 「とりあえず、武装データは先行して完成させてきたから、これでヴァーチャルトレーニングできるぞ」 といって、押入れから訓練機を引っ張り出してくるご主人様。そんなの持ってたんですね… 「それと、これもだ。昔、知り合いの研ぎ師に遊び半分で作らせたものだが、本物の業物だ。これも信頼しろ。俺の次にな」 そういって取り出したのは二振りずつのナイフとマチェットだった。鈍く輝き、見るからに鋭そうな… 「これは…?」 「作ったのは俺じゃないが、設計自体は俺がした。製法も素材もこだわってあるから、硬度も切れ味も並じゃないぞ」 「ご主人様…、本当はボク達にバトルさせたかったの?」 「まあ、そういう気持ちも無くは無かったが、バトルにはあまり興味ないといわれて諦めていたよ」 そういって笑ったご主人様。いつも以上に生き生きしているように見えるけど気のせいだと思っておこう 「とりあえず、俺は出来る事をすべてやった。後はお前達に任せるよ」 「はーい!」 「ご期待に沿えるよう努力します!」 誤配送のときには感じなかった、ゆっくりと温まっていく高揚感。戦うのは怖いけど、ご主人様とマリンちゃんが一緒なら大丈夫 そんな気持ちがボクの心の奥底から湧き上がってくる。やっぱり、ボクも武装神姫なんだ… その夜、久しぶりに、ボクは悪夢を見なかった 続く